2019年のワールド碁チャンピオンシップが3月18日から開幕し、井山裕太九段が準決勝へ進出しています。期待はもちろん「井山裕太九段の優勝」ですが、今の囲碁世界一の棋士は誰でしょうか?柯潔・朴廷桓・申眞諝が候補ですが、レーティング・成績や井山裕太九段との対戦成績などをまとめてみました。
ワールド碁チャンピオンシップ
囲碁には世界戦がある
囲碁の世界では、日本の他にも中国や韓国・台湾などでプロ制度が整備されています。
そのため、日本国内に限定される将棋と違って、囲碁の世界では「国内のタイトル戦」の他に「世界戦(国際棋戦)」があります。
主なタイトル戦・世界戦をまとめると、以下のとおりです。
区分 | 名称 |
国内タイトル戦 | 棋聖戦・本因坊戦・名人戦・十段戦・王座戦・天元戦・碁聖戦 |
世界戦(国際棋戦) | LG杯世界棋王戦・三星火災杯・WGC・TVアジア杯 |
※世界戦:毎年開催のみ記録
※WGC:ワールド碁チャンピオンシップ
世界戦は、毎年開催のフィルターを外すと、「春蘭杯」「夢百合杯」「応氏杯」などが入ってきます。
WGCは日本主催の世界戦
1990年代後半から長く続く日本棋士の世界戦での低迷も背景にあるのかもしれませんが、日本主催の世界戦が減っていきました(以前はトヨタ杯や富士通杯がありました)。
かわって、韓国での李昌鎬九段の登場や中国棋士の台頭を受けて、韓国や中国で世界戦が行われるようになりました。
一方の日本は、「世界戦」よりも「国内タイトル戦」を重視する傾向が強かったので、日程面の問題から主な世界戦へ全て出場するのが難しいという問題を抱えていました。
その後、日本に絶対的な第一人者である井山裕太さんが現れて、七冠を制した時に「世界戦へ出場したい」という希望を改めて口にされました。
そんな風潮が手伝ったのか、日程の整備や日本での世界戦の創設が行われました。
それが、「ワールド碁チャンピオンシップ」です。
ドコモや阪急電鉄が協賛して優勝賞金が2,000万円という、破格の大型世界戦です。
世界戦での日本棋士の成績は?
1990年代前半までは、「日本のトップ=世界のトップ」と見てよかったのですが、1990年代半ばから流れが変わり始めます。
1990年代後半から2000年代前半までの韓国一強時代に続いて、2000年代後半から2010年代は中国が世界戦を席巻しています。
現時点でのレーティングランキングを見ると、上位30人のうち中国が20人を占めて、韓国9人と続き、日本はなんと井山裕太九段ただ1人という悲惨な状態になっています。
毎年たくさんの世界戦が開催されていますが、2000年代後半以降で前述の4つの世界戦を制したのは以下のとおりで、片手で足りる状況です。
- 張栩:2回
- 趙治勲:1回
- 井山裕太:1回
出場棋士の紹介とレーティング
柯潔九段
Googleが開発したAlphaGoとの対戦でも有名ですが、世界戦の優勝7回を誇る世界チャンピオンの一人です。
世界戦のタイトル獲得数ランキングを見ると柯潔九段の上に4名いますが、いずれも既にキャリアのピークは過ぎた方々です。
「現在のトッププロ」というフィルタで見ると、実績の面で柯潔九段を超える棋士はいません。
レーティングでは世界3位につけていますが、直近の対戦を見ても朴廷桓九段や申眞諝九段へ勝利していることから、実力の面でも世界トップの一人と見ていいでしょう。
我のカメラロールにあった柯潔九段(映画スターみたいな白スーツ好き) pic.twitter.com/D7a74BWAGz
— Hendricks Fujiyama (@He2ki) 2019年3月18日
朴廷桓九段
韓国囲碁界の第一人者で、世界戦でも6つのタイトルを獲得されています。
2010年代から韓国囲碁界でトップの地位を維持しており、レーティングでも現在は世界2位につけています。
柯潔九段との対戦成績も直近3局を2勝1敗と勝ち越していて、柯潔九段と並んで世界トップ棋士の一人です。
韓国の最新ランキングが発表され、朴廷桓九段が1位に返り咲きました☆彡李東勲九段が自己最高の4位に!
①朴廷桓九段
②申眞諝九段
③金志錫九段
④李東勲九段
⑤卞相壹九段
⑥申旻埈九段
⑦朴永訓九段
⑧姜東潤九段
⑨羅玄九段
⑩李映九九段
⑪安成浚八段
⑫李世乭九段https://t.co/x2mepXn1eH pic.twitter.com/CPQmR8RoFy— 清水善郎(よしろー) (@yoshiro_kaba) 2019年3月6日
申眞諝九段
レーティングで現在世界1位につけている、韓国囲碁界の次世代の王者です。
前述の4つの世界戦での優勝がまだないのをご本人も気にされているようですが、時間の問題なのは間違いありません。
2019年1月に行われた柯潔九段との2局で負けてはいますが、近く世界戦で優勝するという見方は、衆目の一致するところです。
耕)囲碁世界戦、張栩名人は1回戦で韓国の申眞諝(シン・ジンソ)九段に黒番中押しで敗れました。解説会場に現れた張九段は「途中ちょっとチャンスがあったと思うんですが、少しヨセ方を間違えた。残念です」と話しました。 pic.twitter.com/2VstEy60OO
— 朝日新聞囲碁取材班 (@asahi_igo) 2019年3月18日
井山裕太九段
日本の絶対的な第一人者ですが、世界戦では目立った活躍ができていません。
直近だと、2018年のLG杯世界棋王戦で決勝まで進出しましたが、日本での活躍度を考えると、日本のファンは物足りなさを感じているでしょう。
WGCの舞台をきっかけに世界戦での活躍を期待したいところです。
そして昨日から「ワールド碁チャンピオンシップ2019」が行われており、井山先生が1回戦を突破しベスト4に進んでいます✨今日の相手は世界No. 1の柯潔九段。頑張れー٩( ‘ω’ )و
この写真、井山先生の良い笑顔が撮れた渾身の一枚です✨ pic.twitter.com/biGTHqC1py— 万波奈穂 (@naonao_myu) 2019年3月19日
張栩九段
井山裕太九段の前の日本の王者で、かつて五冠を制したこともあります。
国際棋戦でも、日本苦戦が続く中で2度のタイトル獲得など、活躍されています。
近年は井山裕太九段の活躍に押されて影が薄くなっていましたが、名人戦で久しぶりに井山裕太九段に勝利し、再びスターダムへ戻ってきました。
レーティングでは世界83位につけています。
井山裕太九段、張栩九段、共に黒番です。#囲碁 #wgc pic.twitter.com/ybCz4uDupx
— 毎日新聞・囲碁 (@mainichi_igo) 2019年3月18日
レーティング比較表
申眞諝・朴廷桓・柯潔・井山裕太のレーティング(2019年3月19日現在)を、比較表にしてみました。
井山裕太との対戦成績は?
柯潔九段
2勝2敗ですが、2018年以降は対戦がありません。
世界戦での実績の差を考えると、井山裕太九段が健闘しています。
朴廷桓九段
柯潔九段に比べると対戦機会が多いのですが、2勝5敗とワンサイドになっています。
特に最近は4連敗中なのが気になりますが、世界戦タイトルを獲るには勝たなければならない相手です。
申眞諝九段
まだ1度しか対戦がなく、0勝1敗です。
WGC2019で対戦を見たいですね。
囲碁世界一の棋士は誰?
レーティングでは申眞諝九段がトップですが、世界戦での実績と現在の実力を総合評価すると、やはり世界一は柯潔九段でしょう。
僅差で朴廷桓九段が2位というのが、公平な見方ではないでしょうか。
近い将来、この議論に日本の棋士が入ってきてほしいですね。
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