数学上の未解決問題(超難問)の一つの「ABC予想」を望月新一教授が証明したとされていますが、査読・検証が難航しています。最新情報と海外の反応はどうなっているのか調べました。
ABC予想
内容を簡単に
数学の専門家が延々と考え続けてもなかなか解けない問題は、「数学上の未解決問題(超難問)」と呼ばれています。
近年でいうと「フェルマーの最終定理」が有名で、予想が正しいと証明されるまで360年もかかったという超絶的な問題です。
「数学の超難問」の1つには、「ABC予想」というものもあります。
筆者に詳しく書く能力はないので、出典を示しておきますね。
a + b = cを満たす、互いに素な自然数の組 (a, b, c)に対し、積 abc の互いに異なる素因数の積を d と表す。このとき、任意の ε > 0に対して、
c > d1+εを満たす組 (a, b, c) は高々有限個しか存在しないであろうか?
出典:ウィキペディア
サクッと書かれているので一目簡単そうに見えるのですがこれが超難問で、1985年に発表されてから、長く証明されてこない超難問でした。
望月新一教授が証明?
京都大学の教授で、数学の世界でかなり一目を置かれていた望月新一教授が、自らのウェブサイトで「ABC予想を証明した」とリリースされました。
望月教授は、証明の宣言前から既に顕著な実績を上げてこられていたので、数学の世界で大変な驚きを持って迎えられました。
2012年8月に難解かつ重要な4本の論文を発表し、それを「宇宙際タイヒミューラー理論(IUT理論)」 と称した。それらの論文には、整数論において未だ解かれていない問題の1つである「ABC予想の証明」も含まれていた。
出典:WIREDJP
この証明がこれまた難解で、理解できる人が本人以外ほぼゼロという状態が長く続きました。
現時点でも「この証明は正しい!」という評価は下されていません。
グロタンディークと望月新一の接点?:数論幾何学はアインシュタイン理論を超えるかどうかにある!?https://t.co/WrafrXLuJW
— math_jin (@math_jin) 2018年11月26日
証明の詳しい内容は、以下の書籍でまとめられています。
海外の反応は?
このような超難問を証明したという声が上げられた場合、本当に正しいのかをチェックする作業「査読」が行われます。
望月教授の論文は難解極まりなかったため、「査読」が非常に難航しています。
そんな議論の中で、ドイツの著名な数学者のピーター・ショルツ教授が「証明に欠陥がある」という指摘をされたのです。
望月教授とショルツ教授は18年3月に京都大学で議論を交わされたそうですが、議論は物別れに終わりました。
しかも、議論の後に望月教授はショルツ教授が「深刻な誤解をしている」と自身のウェブサイト上で公開されたことで、外野からすると「どっちが正しいのかわからない」状態になりました。
詳細は以下の記事でまとめています。
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査読・検証の最新情報は?
通常の場合、数学の超難問は以下のような手続きを経て、学術雑誌に掲載されます。
通常、論文を受け取った学術雑誌の編集部は、(査読のある学術誌なら)査読者(レフェリー)に読んでもらいます。編集部がその論文の研究分野の研究者から査読者を選び、匿名で査読をおこないます。査読は数週間程度、長いと数カ月かかるものですが、望月論文の場合は5年以上という異例の長期間におよびました。証明論文でもちいられている「宇宙際タイヒミュラー理論」は、望月教授が20年以上取りくんで、ほぼ独力で構築してきた理論です。論文には多くの新しい用語や定義がちりばめられ、専門家にとっても理解するのに相当な努力が必要です。5年の間には、この論文を勉強するための国際会議も開かれました。普段、日本国外で講演しない望月教授もTV会議システムで参加しました。ただしほとんどの聴衆は望月教授の説明を理解できなかったようです。まだ正式に掲載されていない論文の勉強会がおこなわれるとは、これも異例です。そうでもしないと理解が進まず、査読もできなかったのです。関係者のそうした努力の結果、論文に誤りがないようだと結論され、ついに受理が決まりました。
出典:幻冬舎plus
そんな中、「査読が完了し、京都大学の学術誌で掲載される」というニュースが報道されました。
1000RT:【最大級の業績】数学の超難問、ABC予想を「証明」京大・望月新一教授https://t.co/u5zmfBZapt
「フェルマーの最終定理」などと並ぶ快挙。論文は、数学誌「PRIMS」に早ければ来年1月にも掲載が決まるとのこと。 pic.twitter.com/R3MSGC0QGt
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2017年12月16日
掲載されたという情報はまだ公表されていないので、PRIMSでいつ掲載されるのかが注目です。
ついに証明が認められた!
海外の一部の人からの否定的な反応やはっきりしない査読の進展などで、いつになったら証明が公式に認められるのかわからない状況が続いていました。
そんな中、2020年4月3日に「ついに証明が認められた!」と毎日新聞が報道しました。
【速報】未解明だった数学の超難問「ABC予想」を証明したとする望月新一・京都大数理解析研究所教授の論文が、数学専門誌に掲載されることが決まりました。https://t.co/yPsG1qErXQ
— 毎日新聞 (@mainichi) April 3, 2020
親交の深い加藤教授や望月教授の理論の理解者フェセンコ教授も、喜びのコメントを寄せられています。
加藤文元・東京工業大教授(数論幾何学)は「(望月教授が提唱し、ABC予想を証明した)IUT(宇宙際タイヒミューラー)理論は、「ノーベル賞が何個あっても足らないほどの成果だ」とたたえた。英ノッティンガム大のイワン・フェセンコ教授(純粋数学)今世紀、数学界で得られたいかなる業績より数段上の成果だ。この成果は何百年後にも記憶され続けるだろう。
出典:毎日新聞
暗いニュースの多い最近ですが、久しぶりの明るいニュースですね。
様々なメディアで取り上げられていて、詳細は以下の記事にまとまっています。
柏原正樹特任教授は取材に対し「ABC予想を証明した望月氏の論文が正しいものであると判断した」とコメントした。望月氏は「取材に応じる意向はない」としている。
出典:産経新聞
おすすめの本
これまで謎に包まれてきた「望月新一教授の宇宙際タイヒミュラー理論」を、一般向けに書かれた書籍がついに出版されました。
この本は絶対に見逃せませんね!
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