「激混みで電車が慢性遅延」が代名詞の東急電鉄田園都市線。混雑の原因として渋谷駅の貧相なホームが指摘され、「なんとかして2面3線化」とホーム増設を望む声が蔓延しています。社長が「田園都市線渋谷駅改良」と明らかにされたことで、「ホーム改良で2面3線化」「田園都市線の複々線化」はいつになるのか、調べました。
田園都市線
激混み路線で電車が混雑が代名詞
「激混み」という言葉が似合う路線はたくさんありますが、私鉄で堂々一位を獲得した「激混み」がぴったりの路線があります。
それが今回紹介する「東急田園都市線」です。
出典:東洋経済
東急電鉄には、メインとなる路線が2つ「東横線」と「田園都市線」あります。
東横線(赤い路線)は、渋谷駅と横浜や「元町・中華街」をつないでいます。
田園都市線(エメラルド色の路線)は、同じく渋谷駅から神奈川県大和市にある中央林間駅を結んでいます。
出典:東急電鉄公式ウェブサイト
ともに混雑が激しい路線ですが、東横線は副都心線との相互乗り入れによる渋谷駅の改良など、様々な取り組みが進められて改善傾向です。
渋谷駅東横線、副都心線ホームにモニター型時刻表がつきそうです pic.twitter.com/mwl76CBRkR
— ❄ほわやん❄ (@howayan46) March 14, 2017
一方の田園都市線。
毎日約60万人が押し寄せるターミナル駅にもかかわらず、1面2線(つまり、優等列車を待機する路線がない)という超貧弱な渋谷駅と、首都高と一体で「二子玉川-渋谷駅間」の地下路線を作ってしまったのが原因で、連日大混雑です。
2017年05月15日 21時10分現在
【東急田園都市線/渋谷駅混雑状況】
青葉台駅で人身事故のため、半蔵門線内~あざみ野駅間で折り返し運転を行っています。
渋谷駅のホームは混雑で危険な状況のため、東横線ホーム側からのホーム階段行きエスカレーターは運転を取り止めています。 pic.twitter.com/Z2wYQpRx5R— 東京もぐら (@tokyo_mogura) May 15, 2017
筆者も通勤で利用していますが、歯を食いしばって乗車し続けるという経験を田園都市線で初めてしました。
まさに「地獄絵図」という言葉がぴったりの路線です。
田園都市線渋谷駅で人が線路に転落してた。球技大会で疲れてる上にホーム内混雑で混乱してるしやばすぎ pic.twitter.com/8Z4TLnPISY
— よーくん (@O_RE_NONANIE) September 19, 2018
東急電鉄も色々マイナーな取り組みをして改善を図ろうとしているのです。
が! いかんせんグループ会社の東急不動産が、沿線の住宅・マンション開発を「電鉄事情度外視」で進めていくので、混雑は一向に解消しません。
そりゃそうですよね。
田園都市線沿線の駅を、もう一度読んでみてください。
「二子玉川」「たまプラーザ」「あざみ野」「青葉台」
世の中の会社員と妻が憧れる街々が、そこに広がっているのですから。
「住環境最高」だけど「通勤事情は地獄」な沿線です。
二子玉川
【再掲】 【田園都市線とは何なのか】意識高い系も集う日本一セレブな河川敷再開発タウン「二子玉川ライズ」の痒くなりそうな街並み https://t.co/qHUu12HyDs
#花街 #セレブタウン #再開発 #意識高い系 #タワマン #二子玉川— 東京DEEP案内 (@tokyodeep) August 16, 2017
たまプラーザ
道の日なので2
1.たまプラーザ駅前
2.竹原の古い街並み
3.国道6号の帰宅困難地域
4.笛吹川沿いの桜並木#道の日 #道の日なので道路の写真を貼る #日本道路好団 pic.twitter.com/XB5mWnjs0T— RW (@beautful_soy_sa) August 9, 2018
あざみ野
たまプラーザやあざみ野って大企業のお偉いさんがよく住んでるとこですよね。綺麗な街並みでいいなぁとは思うけど、駅から遠くて坂道多いのは厳しいですね。
老いる田園都市 東急、100年目のひずみ: 日本経済新聞 https://t.co/EBcYTW5dd5
— 南慶模 (@y373_28) July 1, 2018
青葉台
【田園都市線とは何なのか】金妻タウンと持て囃された田園都市線の街「#青葉台」は本当に高級住宅街なのか?https://t.co/o1xWAYnkJX#横浜市 #商店街 #セレブタウン #ニュータウン … pic.twitter.com/xbuE9cyFpN
— 東京DEEP案内 (@tokyodeep) March 27, 2017
混雑率の目安
国土交通省が公表している、混雑率の目安です。
出典:国土交通省
肌感覚的には、田園都市線のラッシュ時は200%って感じですね。
慢性遅延でなんとかしての声!
大混雑の模様は、動画でも投稿されているほどの凄まじさです。
「何があっても入り口のそばには立たない」ことを肝に命じて乗車しています。
この動画は10年前のものですが、近年も大して変わらない印象です。
渋谷駅での乗客の乗り降りに時間がかかってしまうのと、渋谷駅の先の駅「表参道駅」や「青山一丁目」などでも乗り降りが多いので、二子玉川駅を出て地下に入るあたりからノロノロ運転が始まります。
定刻通りに渋谷に着いた日はほぼ皆無のはずです。
ある日なんか、「歩いた方が早いんじゃね?」と思ったくらいです。
あのぎゅうぎゅう詰めの車内でノロノロ運転に耐えるのが、耐え難く苦痛だった記憶があります。
東急電鉄の経営陣はどうした?
これだけの大混雑だと、東急電鉄へのクレームも相当なものでしょう。
東急電鉄の社長へのインタビュー記事でもそれは垣間見えますが、そういったクレームを聞き流していたフシもあります(怒!)。
これまで、当社の沿線人口は2020年にピークアウトするという前提で計画を立ててきたので、言い方は難しいが、抜本的な対策を立てなくても逃げ切れると考えていた。
出典:東洋経済
少し前に「準急」が導入されたことで、朝の通勤時間帯は二子玉川-渋谷間を各駅に停車することになりました。
ノロノロ運転の慢性化を考えるとやむを得ないんでしょうが、それぞれの駅で扉が開くので、さらに乗客が乗り込んできます。
「ノロノロ運転でも通過してほしい」と何度も思ったものです。
ただ、近年抜本的な整備が進む渋谷駅周辺(渋谷ヒカリエとか)の報道で、以下のような断面図が公開されています。
出典:乗りものニュース
断面図の左半分をよーく見ると、「2面4線のスペースではないか?」と思いたくなるような意味深な断面図です。
うーむ。。。
東急電鉄は渋谷駅のホーム増設・改良で2面3線化を検討
「二子玉川-渋谷間を複々線にしろ!」「渋谷駅を2面3線にしろ!」という声は蔓延しています。
クロスレイルの新池袋駅・新渋谷駅・清澄白河駅・新浅草駅は2面3線の構造で、ラッシュ時間には需要のある方面で交互発着が出来る構造となっています。1枚目は朝ラッシュの、2枚目は夕ラッシュの運用を表しています。 pic.twitter.com/KDm2onOQL8
— 宮川 (@Dachiyo9) October 6, 2018
「2面3線」については、以前もアイデアとして東急電鉄で議論されていたようですが、「アイデア」の域を出ず、立ち消えになりました。
「2面3線」は、スペースの限られている地下空間を有効活用するアイデアで、中央の線路を朝は上り電車が、夜は下り電車が利用する方法です。
1方向に2つの線路を作って一時的に駅で2つの電車が停車できるので、名案でした。
イライラを募らせる乗客を中心に、ネット上で「複々線化」や「2面3線」の議論が頻繁に巻き起こります。
が・・・、渋谷駅周辺の建物の林立状況や「二子玉川-渋谷」が首都高と一体で建設されたことから、現実的ではないという声が支配的です。
ところが・・・
その後も変わらない混雑と、ライバル小田急電鉄がやっと複々線工事を完成させたことも影響したのか、ついに東急電鉄が動きます。
東急電鉄の高橋和夫社長が、東洋経済のインタビューで「渋谷駅の抜本的な改良」を示唆したのです。
沿線人口がさらに増加し続けるという予測が最近になって出てきた。そうなると、腰を据えた対策を取る必要がある。新線を造るのはおそらく現実的ではない。駅のホーム数を増やすといったハード面の対策を検討する。
出典:東洋経済
東急電鉄次期社長 高橋和夫氏:日本経済新聞 https://t.co/0OY7GZlmqU
— 想う相続税理士秘書 (@japantaxprosec) February 11, 2018
より具体的に、以下のようにコメントされています。
渋谷駅はホームが混雑し乗客の乗り降りに50秒程度かかっている。そのため後続電車が駅の手前で待たなくてはならず、列車が遅延する。これが輸送量の減少につながっている。ホームの数を増やせば、二つの番線から交互に発着できるようになり列車の本数を増やせる。検討はもちろん始まっているが、当社だけでできる話ではない。地域と協力して進めることが必要だし、多額の費用もかかるのですべて自前ではできない。国の制度を活用することも考えなくてはならない。場合によっては、お客様に費用の一部をご負担いただく可能性もゼロではない。民意を形成するというプロセスはこれからだ。
出典:東洋経済
東急電鉄の役員クラスの人が、ここまで踏み込んだコメントをしたことはこれまでにありませんので、おそらく現実化へ動き始めるでしょう。
メディアからの取材で明らかにしたので、事実上のプレスリリースと受け止めてもいいでしょう。
具体的に「2面3線」とは言っていませんが、「ホームを増やす」とは断言されているので、少なくとも「2面3線」、場合によっては「2面4線」も視野に入れていると思われます。
そうなると、渋谷駅に隣接している建物を取り壊したり移設するなどの、抜本的な取り組みが必要になります。
仮にそのような取り組みをするとすれば、相当なコストが必要なのはいうまでもありません。
何と言っても、駅自体が地下にありますし、そのさらに地下には副都心線&東横線渋谷駅もあります。
だから、「自社だけではできない」と言っているのでしょう。
ただ、「民意の形成」はすでにカッチカチに固まっている・できているので(苦笑)、あとは国の支援などの「お金面」の問題だけでしょう。
社長が正式に「田園都市線渋谷駅の改良」を公表!(19年9月)
2019年9月になって、グループの再編や社名変更とともに「田園都市線渋谷駅を改良する」と正式に公表されました!
今までになかった動きが本格化することが予想されますが、具体的な話がまだ見えていません。
渋谷エリアでは「駅とまちが一体となった都市再生事業の検討」として田園都市線渋谷駅の改良が盛り込まれました。
出典:乗りものニュース
公表内容には具体的な話は書かれていませんが、前述の社長のインタビューと合わせて紐解くと、やはり2面3線の話は具体化させるべく動いていると考えるのが妥当でしょう。
具体化へ向けた施策がある程度のめどは立っているのではないかと推測しています。
公表する以上は「やっぱりダメでした」では示しがつかないですし、経営者は「言ったことができなかった」「計画を達成できなかった」というのを何よりも嫌うからです。
自分の経営者としての能力が無能だったと認めることと同じですからね。
2面3線化はいつ?
ホーム増設
高橋社長のインタビューでは「これから」とコメントされているだけで、具体的に「いつ」とは触れていません。
工事が始まるとなっても、少なくとも数年、下手すれば10年くらいかかるような大工事です。
一方で、メディアに名言しているので、内々ではかなりの確度まで手続が進んでいることは想像に難くありません。
「社長がウソを着いた」なんて、会社の名誉としてもできませんしね。
ここからは筆者の想像ですが、おそらくここ2−3年の間にコスト面の問題は解決するのではとみています。
ある程度プロジェクトとして進められる見込みが立たないと、社長がメディアに名言したりしないからです。
その後工事に着手するでしょうから、「2面3線」が実現するのは、2030年前後になるのではと思います。
田園都市線の複々線化の可能性は?
「首都高が上を走っているので構造上難しい」というのが、大半の見方です。
専門家でないと詳細なところはわからないのですが、本当のところはどうなんでしょうか?
万が一可能としても、「渋谷駅の2面3線化でまずは様子を見る」のが現実的ではないでしょうか?
そこを見極めて「やっぱり複々線化も必要」と判断してから前に進めるのが、良くも悪くも東急らしいと言えるでしょう。
なお、複々線化については、以下の記事で詳しく調査しています🔍
【関連記事】 |
駅別混雑対策は?
田園都市線の駅別に、朝の混雑の中で座席に座って通勤する方法をまとめています。
【関連記事】 |
【関連記事】 |
More from my site